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名もなき支援者連絡ノート 日記
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2012年02月28日 これからの生活・・・その2

先日、これからの生活について少しお話しさせていただきました。その続きの話をさせてください。

前回は、これからの生活を組み立てていくために、どのような流れで考えていけばよいのかという大まかな流れを説明させていただきました。これは、必ずしもこの流れでやらなければならないというわけではないということは注意しておいてください。一番重要なことは、ご本人が将来の生活をどのようにしていきたいかということです。ご本人の人生なので、自分がどのようにしていきたいかという考えがあってしかるべきだと思います。それは誰か他の人が決めるものではありません。もちろん将来のことも今の生活のことも考えられていないという方もいらっしゃると思います。これはご本人が考えられていない、もしくは考えなくてもよい環境にいるからです。それでもご本人に対して今の生活や将来の生活を考えていくことから始めなければなりません。

私自身もやってしまいがちなのですが、自分がこうあって欲しいということを、ご本人に対して押しつけてしまったり、強要してしまったりすることがあります。そのことに気付かないまま関わっていくと、知らず知らずということや求めることが多くなり、ご本人を苦しめてしまったり、うまくいかないことで自分自身が感情的になってしまい、強く当たってしまったりして、何のためにご本人に言っているのかの目的を見失ってしまいます。

ご本人は一人の人格者です。そのことを理解せず、障がいがあるからできないだろうとか難しいだろうとか決めつけて、こちら側が良かれと思って行うことや、安全や安心を求めすぎて過保護になってしまったり手を出してしまったりすることは、ご本人の経験や成長を奪ってしまうことに繋がります。ご本人が経験しないまま、知らないうちに物事が決まっていたりすると、将来、自分でできない、自分で決められなくなる恐れがあります。

確かに、ご本人に将来は自分自身でやってもらいたいから、今からその準備をしていくことは重要です。支援者として親として、こうあって欲しいことをただ行わせることには意味はありません。なぜ自分の意志で生きていかなければならないか、なぜ自分で選んで決めていかなければいけないのかということから考えていただき、実感してもらわなければなりません。こちら側ができないだろうとか難しいだろうとか思うことも、ご本人が感じなければ・理解しなければ意味がありません。実際にやってもらったり、経験してもらったりして、失敗してみて、ああ自分には難しかったんだと実感してもらったり、次回やる時はもうちょっと工夫してみようと考えたり、できるようになりたいから練習したいなど、ご本人が感じて考えていただかなければなりません。

また、ただ単にご本人の希望を聞いて、その想いに対してアプローチをかけていくことだけというのも違ってしまいます。これは、我々は通常物事を選択判断していく際には、いろいろな情報やこれまでの自らの経験に基づいて判断を行うものです。ご本人からすれば、経験していないこと、知らないことを判断するのは難しいのです。よく言われる自己選択・自己決定ということを行うならば、ご本人に対して多くの情報・判断材料を提供し、経験やご本人の能力を踏まえて、自分で選び決めていくことを見守っていかなければなりません。

例として、将来は一人で生活しなければならないということが想定されるのであれば、今の生活環境が続くわけではないという話からする必要があります。その時になって、そのような生活スタイル(一人暮らし、ヘルパーやグループホーム、入所施設など福祉サービスの活用、家族・親戚等と一緒に暮らす等)があるかの説明をして、ご本人に具体的にイメージを持ってもらう必要があります。可能であればご自身で調べてもらうことも行っても良いと思います。具体的にイメージを持ってもらうためには、福祉サービスを見学したり、実際に一人で生活している人の話を聞いたり、写真やパンフレット等での理解をしてもらうことができます。ここでもこういうサービスがあるから使いましょうとか、こういうのが合ってるとか決めつけてご本人に押しつけたり、本人に選択する余地も与えずに干渉してしまうのはよくありません。逆にご本人のためには実際に自分でやってもらわなければならないから、何でも自分で考えて自分でやってもらうというのも、ご本人にはできる範囲や物事を受け入れられるキャパシティがあるので、ご本人ができることを一つひとつ確認しながら説明をしたり行っていくことが重要です。

では、実際に具体的な話の進め方等が分からなかったり、何のサービスがあるのかも分からないと思いますが、詳細は個別にご相談いただければと思います。

ポイントをまとめます。
 ①ご本人が将来の生活をどうしていきたいか。
 ②支援者や親の考えを押しつけない。
 ③ご本人を一人の人として尊重し、できないと決めつけない、過保護になって手を出し過ぎない、何事も経験させるという考えを持つ、ご本人の知らないところで物事を決めない。
 ④ご本人に自分の意志で生きていくこと、自分で選んで決めていくことをなぜ考えないといけないかということから理解してもらう。
 ⑤なんでもご本人に経験してもらう。失敗から学んだり、できないことなんだと実感することも必要。
 ⑥ご本人が選んで決めていく際には、多くの情報や判断材料を用意して経験や能力に併せて自分で選び決めていく。
 ⑦これらのことはご本人のできる範囲やキャパシティを確認しながら一つひとつ行っていく。

これらのことをすぐに日常的にご本人に対して実践していくことは簡単なことではないかもしれません。難しそうだから、この子には無理だからといって諦めないでください。我々はどんな時でもお力になりますし、大変なことはご一緒に行わせていただきます。また我々がセンターで行うことに対しても、ご家庭でのご協力をお願いすることもあると思います。近年では福祉サービスの種類・量も増えてきており、色々な事業所と連携していけば、なんとか生活を組み立てることも可能になってきています。ご本人のために色々な専門家の方々が協力する体制も整っています。ご本人の自己選択・自己決定・自立ということも、できないのではなく個々の障がいにあった方法はいくらでも考えられます。

これらのことがあると理解していても、本当にこの子にできるのだろうか・本当に大丈夫なのだろうかと不安になってしまいますよね。どんなにサービスが充実していても決して不安はつきないと思います。それだけお子さんのことを考えていらっしゃるのですから、きっとお子さんなりの生活を組み立てていくことができますよ。一緒に見守らせてください。